トルコギキョウは病害が発生しやすい植物とされています。菌の栄養源となる糖が花弁内側での受粉により分泌されることから、花粉の部分から菌が繁殖しやすいためです。また、環境へ敏感に反応するため、土壌病害にも弱いとされています。
しかし、生産者でもない限り、トルコギキョウがどのような病気にかかるのか、ご存じではない方も多いのではないでしょうか。
そこで、本記事では、灰色かび病や立枯病など、トルコギキョウに発生しやすい6つの病気とそれぞれの病気の防除対策を紹介します。病気への理解を深めることで、トルコギキョウの栽培にも挑戦しやすくなるため、ぜひ参考にしてください。
1.トルコギキョウに発生しやすい病気と防除対策
トルコギキョウに発生しやすい病気は、次の6つです。
- 灰色かび病
- 立枯病
- 青かび根腐病
- ウイルス病
- 青枯病
- 炭そ病
トルコギキョウでは、それぞれ病気による被害や発生しやすい時期・条件が異なるのが特徴です。防除対策もあわせてご紹介しますので、参考にしてください。
1-1.灰色かび病
灰色かび病は、ボトリチス・シネレアという病原菌によって花や葉、茎の生育に障害が生じる病気です。低温過湿が続いた施設栽培の品種に発生しやすく、9月〜5月に多発しやすいとされます。
灰色かび病では、花や葉、茎などの地上部に病斑が発生し、全体に浸食していくのが特徴です。例えば、花では、花弁から感染し、暗褐色水浸状の病斑が生じた後、花全体が褐色に軟化腐敗します。
葉では下葉や古い葉にみられ、灰緑色から暗緑色の病斑が生じます。花全体を支える茎も例外ではありません。茎では円形病斑が生じ、病斑が茎を取り巻くとその上部が萎ちょうし、枯死します。
1-2.灰色かび病の防除対策
灰色かび病は過繁茂となるような施肥やかん水により、開花期に発病しやすいとされます。そのため、密植にならないようにした上で、降雨の頻度が高い時は強制的に暖房を入れて過湿を避けることが重要です。
灰色かび病はとにかく高湿度を好む病害です。施設内の換気に努め、過湿を避けてください。
また、発病葉や発病株、枯死葉は伝染源になります。発病した際は早期に取り除き、ほ場衛生管理を徹底しましょう。
1-3.立枯病
立枯病は、日中に萎ちょう症状が見られた後、株全体が枯死して立枯症状となる病気です。フザリウム属菌という土壌伝染性の病原菌によって発生します。7〜8月の切り花盛期に発生頻度が高いのが特徴です。
具体的な症状では、まず地際部が水浸状になり、やがて褐変して腐食が始まります。土壌伝染性の病原菌によって発生するため、症状の拡大は地際部に留まりません。症状が進むにつれて、地上部は萎ちょうし、徐々に白変して枯死する一方、根部も腐敗が進みます。
立枯病は、土壌伝染性です。そのため、連作により多発するほか、前作で発生したほ場を耕起すると、発生場所を中心に被害が拡大します。
1-4.立枯病の防除対策
立枯病は土壌伝染性の病害のため、防除には土壌消毒が有効です。毎年定植前に、病気が多発していたほ場を中心に土壌を消毒するとよいでしょう。
また、立枯病は、pHが6.5以下の酸性反応を示す酸性土壌で多発する傾向があります。土壌の酸性度が低くなっている場合、石灰資材を投入して土壌酸度の矯正を図りましょう。
このほか、発症株が観察された場合、ハウスの外へ持ち出して処分することも重要です。
1-5.青かび根腐病
青かび根腐病は、生育不良と下葉の黄化、しおれ、重症の場合、枯死をもたらす病気です。ペニシリウム属菌による土壌病害とされ、素材の有機物が分解・発酵しきっていない未熟有機物を施用する場合や、乾燥しやすいほ場に多発します。
青かび根腐病は、ほかの病気と違い、病徴が一定していません。生育初期に発生した場合、生育不良となって花茎が20〜30センチ程度で開花するほか、地際部が萎ちょう・枯死します。
症状がさらにひどいのが、生育後半です。生育後半に発生した場合、下葉の黄化やしおれ、ボリューム不足などの症状が地上部に現れ、重症の場合、枯死します。
1-6.青かび根腐病の防除対策
青かび根腐病は多肥条件で発生しやすくなるため、適切な肥培管理が重要です。
また、土壌投入資材が発病に影響を及ぼすとされています。そのため、もみ殻の使用を抑え、完熟堆肥を使用するといった工夫をするとよいでしょう。
消毒薬による防除では、夏季にほ場が空く作付け体系の場合、太陽熱利用による土壌消毒法や土壌還元消毒法による防除が有効です。
このほか、ペニシリウム属菌は、連作により菌密度が上昇する傾向があります。発生が多いほ場への作付けは避けましょう。
1-7.ウイルス病
ウイルス病は、ウイルス感染によりモザイクや萎縮、壊そ、黄化などの特徴が現れ、枯死する場合がある伝染性の病気です。感染源の種類によって病名が異なり、主な病気にはえぞモザイク病(CMV)とえそ病(INSV)、黄化えぞ病(TSWV)があります。
えぞモザイク病
えぞモザイク病は、アブラムシ類によって媒介されるウイルス病です。葉に白色のえそ斑が生じ、後に黄化して奇形となります。生育中期に感染すると病徴部位から湾曲し、花の開花不良や奇形をもたらします。
えそ病
えそ病は、ミカンキイロアザミウマによって媒介され、冷涼地で発生する傾向があるウイルス病です。葉・茎にえそ斑が生じ、株によってはえそを伴う葉の黄化や萎縮、茎の屈曲がみられます。
黄化えそ病
黄化えそ病はアザミウマ類によって媒介されるウイルス病です。感染すると葉や茎にえそ斑点やえそを伴った黄化症状を示し、茎頂や花柄が曲がります。
1-8.ウイルス病の防除対策
ウイルスは宿主植物の代謝経路を利用して遺伝子の複製やタンパク質合成を行うため、殺菌剤といった一般的な農薬では防除できません。そのため、媒介する昆虫の侵入を防ぐといった予防が重要です。
例えば、昆虫の侵入を防ぐ対策には、施設周辺の雑草の防除があります。また、施設開口部を防虫ネットで覆うことも、侵入を防止する上で重要です。感染が疑われる場合は、未感染の健全株とわけ、発症したら感染植物を除去するとよいでしょう。
1-9.青枯病
青枯病は、ラルストニア・ソラナケアルムという病原細菌によって発症し、株全体にしおれや萎ちょう、最悪の場合、枯死をもたらす病気です。高温期や排水の悪いほ場、たん水したほ場などで多発します。
具体的な症状では、はじめは軽いしおれが発生するだけで初期症状が軽いのが特徴です。しかし、症状の進行は早く、最終的には萎ちょう、枯死します。外形的には、発症株の導管部が褐変しており、切断面を水につけると導管部から菌泥があふれ出るのが特徴です。
青枯病で警戒すべきは、周辺の健全株に感染しやすい点です。具体的には、かん水などにより、初めて発生した株から、周辺の健全株に連続的に被害が拡大します。
1-10.青枯病の防除対策
青枯病を防除するためには、排水溝を掘ったり、堆肥や腐葉土を加えたりして、ほ場の排水を良くすることが重要です。また、発生株は早期に抜き取り、被害拡大を防ぎましょう。
このほか、発病する植物を連作しなかったり、土壌消毒したりする対策も有効です。
1-11.炭そ病
炭そ病は、炭そ菌によって引き起こされ、時には収穫できなくなるほどの激しい被害をもたらす病気です。多湿条件で葉や茎に発生しやすいとされます。
葉では、まず淡褐色でだ円形の病斑が生じ、その上に黒点状の分生子層とサーモンピンクの粉状の分生子塊が形成されるのが特徴です。茎では、病斑が茎の周辺を取り囲むと、その上部が萎ちょうして枯死します。
炭そ病の発症株から健全株への伝染経路は、病斑上に形成された分生子です。分生子は水滴などによって飛散し伝染していくため、かん水は強く行わないよう注意する必要があります。
1-12.炭そ病の防除対策
炭そ病は多湿条件で発生しやすいため、防除にはハウス内をよく換気し、湿度を下げることが重要です。また、栽培時に発病が見られた場合、発病株はすぐに抜き取り、ハウス外に持ち出して処分しましょう。
2.適切な防除対策を講じて被害拡大を防ごう
トルコギキョウに発生しやすい病気には、灰色かび病や立枯病など、6つです。それぞれ症状が異なりますが、病床が進むと収穫不能となる激しい被害をもたらす病気もあります。
トルコギキョウに発生する病気の症状は当然、一様ではありません。それでも、発生株が現れた場合は早期の除去といった適切な防除対策を講じて被害拡大を防ぎましょう。
参考URL
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https://www.pref.shimane.lg.jp/industry/norin/gijutsu/nougyo_tech/byougaityuu/byougaityuu-index/touko/to2.html
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https://lib.ruralnet.or.jp/jiten/single.php?n=3149
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