202402.18
STORY#3963
団体会員
山梨県中央市でミディ胡蝶蘭を生産・販売する農業法人です。胡蝶蘭栽培の歴史はまだ浅いのですが、この地で100年以上、3代にわたって時代の変化に適応し転作を繰り返しながら農業の営みを絶やすことなく今日まで続けてまいりました。2022年8月に4代目の妻が代表取締役に就任し、女性の感性と視点を生かし、ICTの力でミディ胡蝶蘭の魅力を広く発信し、お客様のお手元に届けたいという思いを胸に日々栽培と経営に励んでおります。
取り扱いの
お花四方を日本有数の山々に囲まれた山紫水明の甲府盆地でミディ胡蝶蘭を栽培しています。日本一の日照時間と近くを流れる二つの河川に恵まれた光と水を浴び、色鮮やかで花もちの良いミディ胡蝶蘭が農園いっぱいに咲き誇っています。
経営理念は 「HAPPYを創出する」
HAPPYとは、代表取締役自身が産み出した造語です。
Happiness Agriculture Produces in Phalaenopsis Yards
(胡蝶蘭栽培で農業が生み出す幸福)
こちらの頭文字をとりました。
胡蝶蘭を贈る人、贈られる人、そして、ここで働くすべての従業員が享受する幸福をクリエイトする農園でありたいという思いを胸に、今日もミディ胡蝶蘭の栽培に励んでいます。お花と共にそこにあるストーリーに寄り添い、胡蝶蘭が演出する人生を豊かにします。
埼玉園芸市場 / 鴻巣花き / するが花き / 南関東花き園芸卸売市場 / 東日本板橋花き / フラワーオークションジャパン / 東京砧花き / 東京フラワーポート
就農したのは2021年4月です。それまでは県立高校で英語を30年ほど教えてきました。農家の長男の嫁として定年後は農業への永久就職という未来像は漠然とはありましたが、近年農業にも迫るDXを背景に高齢の義父母の仕事を見たとき、承継を定年退職まで待てないという結論に達しました。実は、それまでは農園にも行ったことがなかったんです。
でも、承継準備のために農園に入ったとき、色鮮やかに温室を埋め尽くす胡蝶蘭の美しさに心奪われました。「こんな素敵なお花ならもっと世の中の人に知ってもらいたい」というのが最初に思ったことです。さらに、義父の「もっとうちの花を沢山の人に買ってもらえるよう、なんとかしてくれんかなー」のひと言に、「石原さんちのお花がほしい」と指名されるような栽培農家になりたい!って瞬時に思いましたね。
なんせ、農業未経験なわけですから、まずは、勉強しようと思い、株式会社マイナビ農業が主催している「農家の課題解決ゼミ」というセミナーに参加しました。その時のテーマがたまたま「農家の事業承継」だったんです。講師は農家の課題改善のエキスパート佐川友彦さんでした。佐川さんにはメンターとして以来、たいへんお世話になっています。
佐川さんのご指導の中で、農作業だけでなく経営の観点から承継をする、農家の課題を深掘りして解決していくというメソッドを知りました。これなら農業未経験の私にもできる!と思いました。その後、株式会社マイファームの鋭農経営塾の入塾申請をしたところ、志願理由の熱意に感銘を受けた審査員がいらして就農経験者プラス1の枠で入塾を許可されました。そこで7ケ月間、全国の同志と共に学び、首席で修了証書をいただきました。今でも全国に散らばる同志のみなさんの頑張りやアイディアが原動力や励みになっています。その後、教員も早期退職をし、まずはインターンの形で農園に入りました。そこで作業工程、花の種類、鉢の種類、出荷工程を今度はOJTで学びました。
また、最近ではオンラインで女性起業塾を修了し、修了生の女性経営者のコミュニティサロンに参加しながら、嗜好や胡蝶蘭を贈ることに求められている要素をリサーチしマーケティングに活用しています。
はい、多くの方から「実家の農家を継いだんですか?」って聞かれますが、「いえ、長男の嫁が社長になったんですよ」とお答えしています。伝統的な世襲制を打破しました(笑)
実は、花や色へのセンスや感性・ICT活用力・企画力・交渉力・コミュニケーション力・フットワークの軽さ・ネットワークの広さと構築の速さをポイントに「どちらが向いているか?」を二人で話し合ったんです。そしたら、私の方が圧倒的に向いているという結論に達しまして、私が代表取締役に就任しました。逆に栽培や生産管理能力は夫の方がはるかに上なので、そちらは全て任せています。
私は教員時代から一人で仕事を抱え込むタイプでした。その根底には「人に仕事を振るより、自分でやった方が速いし楽(ラク)」という考えがありました。でも、農園に入って思ったことは、アウトソーシングと分業の必要性です。例えば、会社のロゴマークのデザインもお金をかけずにしようと思ったんですが、直売のチラシ1枚とっても納得できるものができない。そこで、デザイナーの方にお願いしてロゴマークからブランディングにもかかわっていただいています。
栽培についても「2年は実地で経験しないと経営はできない」ということを聞いたんですが、そんなの神話ですよね。時は待ってくれません。「とりあえず飛び込んで始めてからそこで考える」タイプの人間なので楽観的に見えるかもしれませんが、それもひとつのやり方だと思います。ですから、自分にできないことは俯瞰はしますが、従業員に任せています。それくらいスタッフへの信頼は絶大です。
花もちの良さ、品種の多さ、安定した供給力、用途に合わせた多種多様なラッピングですかね。
代表に就任した直後に市場巡りをしました。その時に弊社の強みを伺うと、花もちの良さという声がダントツでした。あとは、品種の多さと安定した供給力です。
あと、直売のお客様相手だと、用途に合わせたラッピングの多様性と顧客ファーストの姿勢です。冠婚葬祭、お礼、お祝い、時には自宅用でも、ラッピングをする際には必ずお客様のご要望を伺います。また、例えば、お店への周年記念や開店記念、個展やギャラリーに贈りたい場合にはお店の雰囲気をネットで調べます。今は、内部の様子まで画像が必ずありますから、そしてその雰囲気に合ったお色を提案してラッピングしています。あとは、デパートや路面店のディスプレイ、コンサート会場の飾花などを見て配色の研究なんかもしますね。都内だと銀座や日本橋、丸の内界隈はよく巡ってます。ラッピングは私の仕事です。作品例はインスタをご覧いただければと思います。自らを胡蝶蘭コンシェルジュと名乗り、お客様のお花選びをサポートしています。
これを私は「テイラード・ビジネス(tailored business)」と名付けました。tailorとは英語で「洋服を仕立てる」。お客様の数だけお花を贈るストリーがあります。既製品ではなく洋服を仕立てるようにお客様ひとり一人のためにお花を仕立てるサービスを行っています。これがけっこう好評で、リピーターさんが多いんです。
日頃、温室の胡蝶蘭に見慣れていると、店頭に並んだ胡蝶蘭を見ると残念な気持ちになることがあります。それが弊社出荷のものであるとわかるとなおさらです。具体的に言うとですね、花包紙がかかったまま展示されていたり、百貨店でよくあることなんですが、空調による乾燥で根ではなく花弁に水分が足りなくなっている胡蝶蘭に出会った時です。先日も、「売約済み」の赤札や「えっ、こんなになるの?」くらいの高額な値札がついた胡蝶蘭の花が明らかに乾燥してて元気がないのを見つけまして、とっても残念な気持ちになりました。この状態でお客様の元に届くと思うと、胡蝶蘭の魅力が伝わらないと思うんです。
生産者からエンドユーザーのお客様に届くまでの時間ができるだけ短いのがお花にとっても幸せだと思います。胡蝶蘭の中には環境の変化に敏感なものもあり、そのためにも、直売やお花屋さんからの市場注文が理想だと考えています。そのためにも野菜や果物、お米のように「わたしたちが栽培しています」と生産者の顔の見えることが大切ですね。
教員時代、とても厳しい女性職員がいました。私も周りの先生たちもいつも怒られてばかり。ある年度末、彼女が退職することになり、「石原さんちの胡蝶蘭を贈ろう」ということになりました。私はその方の雰囲気に合う華やかなイメージの胡蝶蘭を選びラッピングして贈ったんです。そしたら、お花を見た瞬間、これまで見せたことのない笑みを浮かべ、次の瞬間涙を流してこう言ったんです。「きれい、きれい、美しすぎて、感動で涙が止まらない」と。お花の美しさに負けないくらい美しい涙でした。こんなにも人の心を動かす力が胡蝶蘭にはあるんだって驚いた経験でした。
この他にも、当園のお花を受け取ったお客様から直接メールや電話、手紙でメッセージをいただいたりすることもあります。他人には話さないんだろうなと思われるストーリーが垣間見えることがあり、思わず胸が熱くなることもあるんですよ。私の中の宝物です。
弊社栽培のミディ胡蝶蘭の魅力を市場にいらっしゃる買参人の方々にアピールすること。さらに言えば、エンドユーザーのであるお客様がお花屋さんに「石原洋蘭園のミディ胡蝶蘭を買いたいので取り寄せてください」と注文するようになればいいなと思います。そうすれば、お客様、お花屋さん、市場、生産者みんながWIN-WINの関係になれるじゃないですか。
あとはですね、私、教員時代に「これはいける!」とアイディアを提案しても「前例がないから」「今までこうやってきたから」と通らないことがよくあったんです。でも、数年たつとそのアイディアがスタンダードになってたりする。トレンドを読む力と、時代の流れへの対応が求められている今、臆することなく閃いたことは形にしていきたいです。そのためにも女性+労働者+経営者の3つの視点を持って仕事に臨んでいます。
これまで弊社は「花を市場に出荷すること」を中心にやってきました。出荷準備をしてトラックを見送ったらそれで終わりのような感覚だったと思います。しかし、今は「花を届けるサービス」を売る農園でありたいと考えています。台湾から苗が届いた瞬間から、栽培を経て、市場→販売店経由または農園直売でお客様のもとに弊社のミディ胡蝶蘭が届くまでがサービスだと認識しています。これまでは市場の声を聴くことはあっても、買参人である販売店やエンドユーザーであるお客様の声に耳を傾けることはしてきませんでした。今は、販売店やお客様とのつながりも積極的に事業に活かしていきたいと考えています。胡蝶蘭の魅力を最大限に引き出す努力を重ねていくこと、SNSでその魅力を発信すること、この二つを意識して仕事に向かいたいと思います。
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