202408.16
STORY#4090
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バラに関するストーリー一覧6
人々を魅了し続けるバラ |
バラ科(Rosaceae)バラ属(Rosa)の植物の総称です。バラ属は、低木、または木本性のつる植物で、葉や茎にとげを持つものが多く、花弁は5枚が基本ですが、園芸種では大部分が八重咲きとなっています。 国内のバラの生産
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バラの故郷 | バラの原種は250種前後あると言われています。正確に分からないのは、似通った原種が同一品種の亜種(サブ・スピーシーズ)なのか、それとも一個の独立種なのか、学者の間でも議論があるからだそうです。
自生地はヨーロッパ、北アフリカ、中東、コーカサスからヒマラヤ地域、中国、韓国、日本。特徴的なのは自生地がすべて北半球に限られていて赤道以南のオーストラリア、ニュージーランドには原種は見られないという点です。なお、日本に自生するバラは、ノイバラ、ツクシイバラ、ヤマイバラ、テリハノイバラ、ヤブイバラ、モリイバラ、アズマイバラ、ミヤコイバラ、フジイバラ、ハマナス、カラフトイバラ、タカネバラ、オオタカネバラ、カカヤンバラ、サンショウバラなど15種ほどが知られています。 原種それぞれは自生地の環境に適合しているので、耐寒性のある原種、温暖な気候下でないと生育しない原種など、それぞれ異なった性質を有していますが、一般的には日照にめぐまれた冷涼な気候を好む傾向にあります。
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バラの歴史 | バラは伝説やロマンに彩られた究極の植物であるといわれていますが、単に優れた園芸植物というだけでなく、文芸、美術、さらに香料や薬の分野でもきわだった役割を演じてきました。 クレタ島の壁画(3000-1100BC),バビロニアの叙事詩(2000BC)、ギリシャの史家ヘロドトスの著書「歴史(400BC)」、哲学者テオフラストスの植物誌(300BC)など、 バラは紀元前にもいろいろなところに登場してきました。クレオパトラや皇帝ネロも沢山の花びらを宮殿の床に敷きつめたり、ネットにいれて天井から吊したり、 あるいはお風呂に浮かべて楽しむなど、贅沢な使い方をしたことが知られています。 ちなみに、クレオパトラがアントニウスを迎えたときには宮殿全体をバラで飾り、廊下にはバラの花びらを20cmほど敷きつめたと言われています。高価なローズオイルも、 支配者の象徴としてふんだんに愛用したようです。 政治との関わりではイギリスのバラ戦争が有名です。白バラを徽章とするヨーク家と、紅バラのランカスター家が王座をめぐって激しく対立したのですが、 結局ランカスター派のヘンリー(七世)が王位の座につき上り、ヨーク家のエリザベスを妃とし、シンボルも紅バラと白のTutorローズを用いて国の統一をしました。 |
バラはいつから愛されてきたのか? | バラの栽培史については紀元前500年頃に、古代中国の宮殿(周王朝)の庭で栽培されたのがもっとも古い記録だとされています。ギリシャでも紀元前後に栽培されはじめたらしいのですが、 一般化してきたのは3世紀のローマ帝国時代以降といわれています。 ギリシャの女流詩人、Sapphoがバラは「花の女王」であると讃えましたが、それ以来すでに2千年以上も経っています。長い歴史の中でバラの魅力は衰えるどころか益々深まってきているなんてすごいですね。
バラが芸術品のモチーフとして頻繁に登場するようになったのは14世紀以降、イタリアのルネッサンス期から後のことで、この頃からヨーロッパにおけるバラの栽培も盛んになってきました。 バラの発展に偉大な貢献を果たしたのは、ナポレオンの第一妃ジョセフィーヌ(Josefine)です。彼女は1802年にマルメゾン離宮に広大なバラ園を作り、そこに世界から集めた珍しいバラを栽培しました。 花だけでなく樹全体を鑑賞の対象にしました。ジョセフィーヌは1814年に亡くなりましたが、彼女のコレクションは250種類にも達していました。( この大コレクションの多くは図譜として残されています)さらに、このバラ園で働いていたA.デュポンが世界で初めて人工交雑によって新しいバラを作出。 近縁種間の交雑によって花形、色、香り、四季咲き性などバラの遺伝的な性質に革命的な変化が生じたので、この時期よりも前のバラを「オールドローズ」、 それ以後のバラを「モダンローズ」と称するようになりました。 |
バラの分類 | バラは大きく原種、オールド・ローズ、モダン・ローズの3つの系列に分かれています。原種は上述のとおり250種前後があるのでひとくくりに考えることが多いです。
「オールド」と「モダン」
オールドローズは古くからある歴史的な品種群を指します。
バラの育種は西洋で盛んに行われ、日本で江戸時代が終わる19世紀の半ばころには本場ヨーロッパではすでに様々なバラの系統が生まれていたそうです。 主流はオールド・ローズ群に属する春に1度だけ開花する一季咲きのグループ。当時も年間を通じて繰り返し咲く四季咲き品種も存在はしていましたが、そのあまりの弱い性質のため普及するには至ってなかったそうです。 そのような当時の状況下において、オールド・ローズ群に属する系統のなかで将来性を感じる際立った特徴を有していたのが
★オールドローズ群:ハイブリッド・パーペチュアル系統 の2つの系統で、この交雑が進められていくことになります。 ハイブリッド・パーペチュアル系統
19世紀半ば~後半までの西洋ガーデン・ローズの中心としてあり続けたこの系統は、永久=perpetual・パーペチュアル を意味する単語が付けられてオールド・ローズ群のなかでも高い完成度を誇っていました。 大輪花を咲かせ、同時にまた鮮やかで多彩な色彩が特徴の系統です。 寒さ[耐寒性]に強く、また強健さが特徴で寒さに厳しい西洋のガーデン・ローズとして広く受け入れられた理由でもあります。最初のハイブリッド・パーペチュアルが誕生した19世紀最初[1816年]から19世紀の後半までの100年未満の間に1000品種以上が生み出されたとも言われます。 大輪花に多彩な花色を咲かせ、さらに耐寒性に優れていたハイブリッド・パーペチュアルですが、最大の弱点は完全な四季咲き性を持ちえなかったことにありました。 紅茶の香りに似ていたことが由来の「ティー」系統
ハイブリッド・パーペチュアルに不足していた四季咲き性という特徴は中国に起源するバラが備えていました。そのバラの名前は「ロサ・キネンシス」です。 18世紀末ころから本格的に西洋に入ってきたロサ・キネンシスは、様々な紆余曲折を経てやがてオールド・ローズ群のひとつ「ティー・ローズ」系統の誕生へとつながります。 四季咲き性のティー・ローズ系統は同時に香りも優れていました。香りが紅茶の香りに似ていることからティー・ローズと命名されたそうです。 19世紀前半にはこのティー・ローズの系統が成立していたと言われています。 他方で花色の多彩さなどがティー系統には不充分であり、それが弱点となっていました。 ハイブリッド・ティーの完成 = モダン・ローズの誕生
ハイブリッド・パーペチュアル系統には長所と短所があり、その短所を補うのがティー系統だと注目され、ハイブリッド・パーペチュアルの長所とティーの長所が組み合わさり、新しい系統「ハイブリッド・ティー」[HT]が誕生します。 ―豊かな芳香を放つ色とりどりの大輪花が繰り返して開花する― バラの育種に携わる先人たちが夢見てきた特徴を兼ね備えるモダンローズ[現代バラ]の誕生です。 西洋で発展してきたハイブリッド・パーペチュアルに中国からもたらされたバラが出会い、そして交わり、東西の融合によりバラの世界に新しい時代が生み出されたのです。 モダンローズ最初の品種は「ラ・フランス」
1867年、フランスのジャン=バプティスト・ギヨー・フィスという人が「ラ・フランス」という大輪のピンクのバラを育種し、当時開催されていたパリ万博に出品しました。この「ラ・フランス」、発表当初から新しいスタイルのバラとして人気はありましたが、新系統として認められませんでした。 ハイブリッド・ティーの特徴
①四季咲き性:春~初冬まで年間を通じて複数回咲く ②木立ち性:支柱に結ばなくても木のように株が自ら立てる(自立できる) ③大輪:花が大きい。8cm~12cm以上の花径の大きさ。1つの枝の先に大輪の花を1つ咲かせる ④同じ枝から次に開花するまでの間隔が長い:1茎につき1つの花が咲くので1℃切り落とすと次に開花するまでに時間がかかる ハイブリッド・ティー[Hybrid Tea]の頭文字から「HT」と表記されたりもします。 モダンローズはオールドローズが一季咲きだったのに対して、完全四季咲き、高芯剣弁咲き(花びらが剣のように尖り、中央の芯が高くそびえる姿)を特徴とするハイブリッド・ティー(ハイブリッド・パーペチュアルとティーローズの交配)。それまでにない花色が出現し多彩ですが、香りはオールドローズほどの濃厚さはないそうです。 ハイブリッドティー(HT)は、古くからあった系列(クラス)とは一線を画する新しいクラスとされ、このHTの後に世に出たポリアンサやフロリバンダなどに属するバラを「モダンローズ」と呼び、‘ラ・フランス’以前からあるクラスに属するバラを「オールドローズ」と呼ぶようになりました。 |