202410.04

STORY#4228
スプレーマムに関するストーリー一覧10
還ってきたスプレーマム
日本で菊と言えば大きく2つに分類されることをご存じでしょうか。一つは日本の菊である「和菊」、もう一つは西洋の菊の「洋菊(西洋菊)」に大別されます。スプレーマムは、日本や中国が原産の和菊が1940年代にアメリカに渡り、品種改良されたのち1970年代にヨーロッパを経由して還ってきたため洋菊に分類されます。そのためキクではなくマム(キク)と呼ばれます。スプレーマムは1本の枝に4輪から6輪の花をスプレー上に咲かせます。ボリューム感があり見る人楽しませてくれ、さまざまなシーンで活躍しています。 |
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多種多様な品種
花びらが一重の「シングル」、幾層にも重なっている「デコラ」、花自体が丸い形の「ポンポン」、花びら1枚1枚が細く伸びている「スパイダー」などの咲き方があります。色も白・黄色・ピンク・赤・オレンジ・紫・緑・複色とさまざまです。日本では愛知県で最も多く生産されており、他にも和歌山県、栃木県、静岡県、群馬県などで栽培されています。 |
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国産花と輸入花
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伝統的な栽培の技法1.電照栽培
消費者の方々に知られる機会はほとんどありませんが、実は国産のスプレーマムは、花を刈る前のマムの育成期間にあたる育てる工程でも、丁寧に作業が行われています。スプレーマムは基本ビニールハウスで育てるので、年間を通して出荷されています。およそ挿し芽から3カ月で出荷するのですが、その3カ月間はマムと対話をするかのように、私たち生産者もマムの成長に合わせてじっくりと向き合います。まず、根っこのない「穂(ほ)」と呼ばれる状態の小さなマムの挿し芽をするところから始まります。穂が地中に根付くまでは、ポリフィルムで畝全体を覆うべたがけをし、温度や湿度の管理をおこない成長を促します。ある程度成長が確認できたら、次は電照栽培という手法に切り替えます。菊は短日植物の仲間で、日照時間が短くなると花芽をつけるという性質を持っています。そこで花芽ができる前に人工的に光を当てて、開花を抑制するのです。そうすることで、花芽をつけずに、茎や葉の成長を促し、花が咲いたときに茎も葉も花とともに見栄えのあるマムに育てることができます。 日本で電気を利用した電照栽培が行われるようになったのは戦後です。電照菊で有名な愛知県豊橋市の生産者が始めたとされています。夜間に光を照らすことで開花の時期が調整できるため、菊がいつでも手に入る花になったのも、この電照栽培によるものだとされています。菊の花が日本人にとって身近になったのも、このような生産者の努力が繋いできたものなのです。
2.遮光栽培
電照栽培で開花を抑制し十分に成長を感じられたら、今度は逆に遮光栽培を行います。遮光栽培とは、光を遮断し植物の開花促進を促す方法です。人工的に日照時間を短縮して開花を促成するのは、電照栽培同様に菊の性質を利用した栽培方法です。シェードと呼ばれる黒いポリフィルムをハウスの中に取り付け、花に光が当たらないようにします。大体夕方の5時~6時に被覆し、次の日の朝6時~7時ころ外します。そうすることで、花芽のつきが早くなり、シェードをつけてから20日前後でつぼみがつくようになります。私たちは菊という植物の性質を利用しながら、人為的に手を加え、開花を抑制したり促成させたりして、菊の声を聴きながら見た目の良い花を育てることを第1に考えます。
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Autumn has come
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