「私、植物を買ってもすぐ枯らしてしまうのよね。だから、鉢物は買わないようにしているの。」と、よく耳にします。
お花屋さんで花を買い、花瓶に飾って楽しむ方法と違い、土に根付いている植物を育てるという楽しみ方はハードルが高く感じられることが多いようです。今回はそんな「鉢物」を気軽に楽しんでいただける方法を、鉢物生産者がお話しします。
鉢物のデメリット解決策とメリットの楽しみ方
まずは、鉢物を育てる上で大変だと感じられそうな点や、良いねと感じていただけそうな点をまとめてみます。
- 水やりがわからない
- 日光浴の仕方がわからない
- 大きくなったらどうする
- 害虫が怖い
- 長く楽しめる
- 大きくできる
- 増やせる
- 愛が湧く
~デメリット解決策~
まずは4つのデメリットについてその解決策をお話ししていきます♪
水やりのコツ
水やりの基本は、土の表面が乾いたら植物の<根元>にたっぷり水をあげます。
ただし、初心者さんは乾き具合を見極めるのが難しいものです。
水のやりすぎは、根腐れ(土の中に水分が多くなりすぎて、根っこが腐ってしまうこと。)を起こしてしまったり、逆に乾かしすぎて水枯れをしてしまうこともあります。
わからないときは、少し土を触ってみるとよいでしょう。表面ではなく、2〜3センチ掘って触るとよいです。土の中が乾いていたら、底から水が出てくるまでたっぷり水をやり、受け皿に溜まった水を捨てるようにしましょう。
水やりの時間帯
水やりは空気の涼しい朝のうちにしましょう。なぜなら、植物が育つ光合成に水が不可欠だからです。植物が水を必要とする朝のうちに水をあげ、夜には土が乾いた状態になっているとベスト。ただし、どうしても朝にあげられない場合、夕方になってもOK。夜に乾燥していれば大丈夫です。土がずっと湿った状態になると、病害虫が発生しやすくなるので注意が必要です。
季節ごとの水やり
湿度や温度に合わせて水やりの頻度を変えましょう。
春の水やり
植物が成長を始める春は、あたたかくなるにつれて水やり頻度を増やしていきます。3〜4月は土が乾燥していなければ、毎日の水やりは必要ありません。2日に1回程度で大丈夫です。5月頃から毎日を目安にするとよいでしょう。
梅雨時期の水やり
初心者さんがよく失敗するのが梅雨です。高温多湿の日本では土が乾きにくく、加湿が苦手な植物はダメージを受けやすくなるので、鉢の置き場所を工夫して土の状態を確認してから水やりをします。
夏の水やり
夏は水枯れに注意しましょう。室内での鉢物を楽しむ場合、エアコンの風が直接あたるところは避け、風通しが良いレースカーテン越しに日差しがあたるような窓際に置くと良いでしょう。水やりは毎日でも構いませんが、室内で育てている場合、乾燥が追いつかないこともあるので、よく土を確認してから水やりをしましょう。
秋の水やり
寒くなるまでは夏と同じように水やりを行い、寒くなってきたら水やりの頻度を徐々に減らしていきます。土が乾いてなければ水やりは必要ありません。
冬の水やり
週1〜2回の頻度の水やりで十分になる冬ですが、氷点下になったりする地域は注意が必要です。土の中の水が凍って根を傷めることがあるので、日が登った午前中に行うとよいでしょう。
屋外の鉢物
夏は強すぎる直射日光や、冬は気温の変化に注意が必要です。
夏は、早朝や夕方の比較的涼しい時間帯を選んで日光浴をさせてあげましょう。直射日光があたると葉焼け(葉が日光によってダメージを受け、焦げたようになること。)の原因となり大きなダメージを与えることになります。
冬は、暖かい時間を選んで日光浴をさせてあげましょう。
室内の鉢物
普段室内で育てている鉢植えを、屋外で日光浴させる場合は注意が必要です。
あまりに環境が変化すると葉焼けの原因となります。
まずは窓際に置いてみて、それから外の日光にチャレンジしましょう。
鉢植えの植物を育てていくと、どんどん大きくなっていきます。
鉢に対して根が密集しすぎて水はけが悪くなったり、酸素不足になると育たなくなってしまいます。そんなときに「株分け」という方法を行います。
自分が育てた植物の子供ができるようで、楽しいですよ。
「株分け」とは
成長した植物の株を、複数の株に分ける作業のことで、親株から根や茎を分割します。植物によっては、株分けができる種類とできない種類がありますが、根っこや根元を小分けになるものは、できることが多いです。
根や茎を傷つけないように優しくほぐしながら分けていき、新しい鉢に植えます。
そのとき、ご自身のインテリアに合わせた、おしゃれな鉢やプランターを選ぶのも楽しみの一つです。
鉢のサイズ
株分け作業をするとき、どのくらいの土が必要かわからず、困ることがありますよね。鉢のサイズは「〜号」と、なかなか聞き慣れないサイズ表記です。
羅列すると、標準はこうなります。
4号(直径12cm/土の容量0.6L)
5号(直径15cm/土の容量1.2L)
6号(直径18cm/土の容量2.1L)
7号(直径21cm/土の容量3.3L)
8号(直径24cm/土の容量5.1L)
9号(直径27cm/土の容量7.3L)
10号(直径30cm/土の容量8.4L)
11号(直径10cm/土の容量10L)
12号(直径14cm/土の容量14L)
プランター(長さ65cm/土の容量12L)
ここから、元々の植物についている土や鉢底石などの量を差し引けば良いでしょう。
植え込んだら、根の周辺や鉢の底にしっかりと土が入っているか確認しましょう。植え付け後、割り箸などの細い棒状のもので優しくつついてあげましょう。
さらに、上辺にウォータースペースを2cmほどあけて植えたり、土を上から押さえすぎないように注意しましょう。
土を用いる鉢物には、どうしてもこの悩みはつきまといます。
心配な方は、お店で購入後に葉や茎についたホコリやチリをきれいに落としてから室内に運び入れましょう。水やりのついでに、水を上からかけてあげてもいいですね。
その後は、土がずっと湿った状態にならないよう、土の環境が悪くならないように注意しましょう。
~メリット~
鉢花を「育てていく」メリットについてまとめてみます♪
長く楽しむことができる
デメリットでもあったように、鉢植えの植物は切り花とは違い、長期間育てる楽しみがあります。長く楽しむことで成長していくので、鉢のサイズが合わなくなり株分けしたり、サイズアップしてさらに大きく育てていくことができます。
お店で買ったときは小さかった植物が、自分の大きさを越えていく楽しみを知ってしまうと、どんどん鉢植えを増やしてしまい、植物愛の沼にハマってしまいます!
大きく育てることができる
植物を選ぶ際に、サイズで選ばれることが多いと思います。
鉢物の良さは、どんどん大きく育てていくことにもあります。はじめは棚の上にちょこんと置いてあった植物や花が、リビングの主役になったり、さらにはベランダやお庭に移動したりして、自分とともに大きくなっていく姿が見られるのも鉢物のかわいいところです。
増やすことができる
鉢物が大きく育つと、中には「株分け」という、親株から根や茎を分割できる種があります。
花ではクリスマスローズやシンビジューム、樹木だとアジサイやブルーベリー、観葉植物ではポトスやサンスベリアなど、これだけにとどまらずたくさんの種類があります。ハーブなんかも良いですね。
鉢物を購入する際「株分け」ができるかをポイントに購入すると、長く楽しめるだけでなく、たくさん増やすことができます。
自分で育てた植物をプレゼントすると、すてきなギフトですね!
愛が湧く
さぁ、ここまで読みすすめた、まじめでがんばりやさんのあなたなら、もうピンときているはずです。
手をかけすぎても枯れ、放っておきすぎても枯れてしまう鉢物とは、程よい距離感を学ぶ楽しさもあります。
植物は、何事も<やりすぎ>と<やらなさすぎ>がダメなだけなのです。
さらには、それぞれの植物に合わせた「最適」があります。
同じ品種でも、すべてに合わせた適量が存在するわけでもなく、環境や時期によって適量が変化します。そこが植物を育てる上で、最大の楽しみで最大の難問でもあります。
人と同じようにつかず離れずで育てる。
見える部分と見えない部分、それぞれの個性や環境に合わせた最適なお世話をする。
それこそが、私たち生産者の楽しみでもあります。
あなたが素敵な鉢物ライフを楽しめることを応援しています!
~日本花き生産協会 鉢物部会~