国産のお花。生産者の想い。日本のお花のポータルサイト。

STORY#4519

小さな盆栽の世界 – 山下園芸の挑戦

団体

#愛知県 star

お花の数0

STORYの数1

愛知県安城市で和物とブルーベリーの生産を手がける山下園芸の山下直木さん。テーブルの上に置ける小さな盆栽から、実のなるブルーベリーまで、四季折々の植物を育てています。今回は山下さんに、植物への思いや生産の苦労、そして今後の展望についてお話を伺いました。

和物とブルーベリー – 二代目としての歩み

――山下さんがお花農家さんになったきっかけを教えてください。

山下:父親が和物を栽培していたのが一番大きいところだと思います。私は二代目です。父親は和物だけを私の小さい頃は作っていました。私が大学生の時にブルーベリーの栽培を父親が始めて、それを受け継いだ形になります。

ただ、当初は大学を出てすぐに家業に入るのではなく、どこかで勉強しようと考えました。親父と同じことをやるのは面白くないなと思って、地元のシクラメン農家に二年間研修をさせてもらって、シクラメン栽培を親とは別個で始めたんですね。

15年ぐらい経って、この暑さでシクラメンの良品率がなかなか厳しいという中で、改めて親父のやっていることを見ると、ロスなく作っているというところで、そっち側に僕自身もシフトしていきました。

――シクラメンを結構長くやられていたんですね。

山下:そう、頑張ってやってたんですね。僕の研修の親方もまだシクラメンを作ってます。

ブルーベリーと和物の魅力

――ブルーベリーや和物の魅力は何ですか?

山下:ブルーベリーの魅力はやっぱり通年で販売できることですね。消費者の方が買われて省スペースで実をつけて収穫を楽しめる、そんな果実だと思うんですよね。

小さい二年生の苗木から育てて、次の年にはもう実を収穫できる。そんな楽しみがどんなご家庭でも楽しめるというところです。落葉樹ですので、葉っぱのない冬の時期から3月の終わりに花が咲いて、4月の中下旬に花が終わっていくんですけど、そこから先は実がだんだん膨らんできて収穫の時期。

そんな感じで、実が終わるとまたサイズアップして大きい鉢に育てて、大鉢としてまた売ったりしてます。一年間の通年で販売も出来るし、年越してもまた大鉢として、さらに価値を高めて販売できるというところで、すごくいいなと思っています。

――一般の家庭で育てるとしたら、どのくらいの鉢サイズがおすすめですか?

山下:うちでは二年生の13.5cmから15cmの鉢サイズで主に提供していますので、そこから7号ぐらいのサイズの鉢に植え換えると一番適当かなと思います。あんまり一気に大きくしちゃうと、大雨が降った時になかなか湿り気が取れなくて、根が上手に張っていかない原因にもなりますので。

ツーサイズアップぐらいがおすすめですね。ツーサイズアップすると、だいたいその鉢で二年ぐらいは楽しめます。さらに大きくしたければ二年後に、またツーサイズアップ。どんどん木も大きく、鉢も大きくしてもらうということですね。

こだわりの生産方法

――和物の生産とかブルーベリーの生産はどんな環境で行われているんですか?

山下:和物は無加温のビニールハウスがメインです。一部、夏場に出荷する和物については暖房室に少し入れますけれども、それ以外はうちの施設の三分の二は無加温の施設ですね。三分の一だけを加温して少し成長を促してやったり、夏場に向けてそういうことをやっています。

ブルーベリーについて言えば、挿し木だけを無加温ハウスで行って半年後ポット上げするんですけど、ポット上げ以降はずっと何年間と路地の露地でずっと過ごします。

――暖房費あんまり使わないエコな作目ですね。

山下:はい、おっしゃるとおりで助かっています。

――ブルーベリーとか和物って水やりの頻度少ないんじゃないかなと思うんですが。

山下:いや、あのね、和物なんかはすごく水はけのいい土質使うんですよね。なので、水やりの頻度はすごく高いです。真夏なんかは特に高いんだけど、ただうちはもう自動冠水で頭上冠水。スイッチ一つで自動冠水がかかるような形には全てなっています。

ブルーベリーの生産について言えば、外の路地なんですけれども、ブルーベリーの圃場の例えば10m×10mの面積に土手を周囲に作って、表面をマルチングして水がたまるようにしてあるんです。その中に水を入れちゃうわけ。3cmぐらいつけて、そうすると毛細管現象で徐々に上まで染み込んで、数時間の後にその水を落としちゃうという灌水方法です。

――大型プールみたいな感じですね。

山下:そう、田んぼプールとか呼んでるけどね、うちは。そのやり方でブルーベリーはすごく助かってますよ。

――直接お仕事とは関係ないのですが、お休みとかはあるんですか?また、その際はどんなことをされているんですか?

山下:冬には丸1日の休みがあり、土日祝日は半日休みを不定期にとります。日帰り旅行に出かけることが多いですね。道の駅や産直めぐりが好きです。

盆栽仕立ての技術と苦労

――植物を育てていて、一番難しいと感じるポイントは何ですか?

山下:水やりは省力化ですけど、和物について言えば盆栽仕立てで一本一本手で針金をくるくるっと枝に巻きつけて、それをねじって形作るんですよね。それがいろんな植物を合わせると何万とありますので、その作業っていうのはすごく大変です。

一つ一つ、やっぱり巻き手の個性が出るっていうかね。私だけではなくて母も手伝ってくれていますし、パートさんも何人か手伝ってくれているんですけど、やっぱりそれぞれの個性が出るので、ある程度統一感を持たせるための指導も必要です。

あとは季節によって植物の状態が変わるので、その時々の最適な剪定や針金かけのタイミングを見極めるのも難しいですね。特に初夏から真夏にかけては、植物の成長が早くて針金が食い込んでしまうこともあるので、こまめにチェックする必要があります。

小さな盆栽の魅力

――小さな盆栽の魅力について教えてください。

山下:和の盆栽というと、大きくて手入れが大変で、専門知識がないと育てられないというイメージがあると思うんです。でも私たちが作っているのは、テーブルの上に置ける小さなサイズの盆栽。初心者の方でも気軽に楽しめるように工夫しています。

小さいからこそ、お部屋のインテリアとして取り入れやすいですし、置き場所に困りません。それでいて、四季の変化を感じられる。春には新芽が出て、夏は青々とした葉を楽しみ、秋は紅葉し、冬は枝ぶりを楽しむ。そんな一年を通じての変化が、小さな鉢の中で完結するんです。

――人気のある樹種は何ですか?

山下:やはり黒松は定番で人気があります。あとは紅葉する樹種、特にもみじは秋の色づきが美しいので喜ばれますね。最近は実のなる品種、小さな柑橘系のキンズも人気です。椿の盆栽仕立ても人気があります。

また、和物で1番特徴的なものは天皇梅(テンノウバイ)です。先代から60年に渡り生産しています。曲げた木姿とピンク色の小さな八重咲の花を3月から5月にかけて咲かせる逸品です。

あとは、お正月用の松竹梅のセットも毎年好評です。小さくても本格的な雰囲気が出せるので、マンションなどにお住まいの方にも喜んでいただいています。

若い世代への広がり

――最近は若い世代にも盆栽や植物が人気だと聞きますが、実感はありますか?

山下:ここ数年、特にコロナ禍以降は、若い方の購入が確実に増えています。SNSで盆栽や観葉植物の投稿をされる方も多いですし、インテリアとしての植物の価値が見直されているように感じます。

特に20代、30代の女性のお客様が増えていて、和モダンなインテリアに合わせて盆栽を取り入れたいという声をよく聞きます。そういった方々向けに、少し現代風にアレンジした盆栽や、オシャレな鉢を使ったものも作るようになりました。

――若い世代に向けて何か工夫されていることはありますか?

山下:まず育て方の説明をできるだけシンプルにしています。QRコードをつけて、スマホで詳しい育て方が見られるようにもしていますね。あとは、SNSでの発信も積極的に行っています。季節ごとの手入れ方法や、盆栽の魅力を伝える動画なども作っています。

あとは展示会やワークショップも定期的に開催しています。実際に手に取って見てもらったり、簡単な盆栽づくりを体験してもらうことで、敷居を低くする努力をしていますね。

今後の展望

――今後の展望や挑戦したいことはありますか?

山下:まずは和物とブルーベリーの品質をさらに高めていくことですね。特にブルーベリーは品種改良が進んでいるので、新しい品種も積極的に取り入れていきたいと思っています。

あとは海外展開も視野に入れています。日本の盆栽文化は海外でも人気がありますが、本格的な大型盆栽は価格も高く、手入れも難しい。その点、うちの小型盆栽なら比較的手頃な価格で本物の盆栽の魅力を味わえますから、そういった需要を開拓していきたいですね。

それから、地域との連携も大切にしたいと思っています。地元の学校での園芸教室や、高齢者施設での園芸療法的な活動も少しずつ始めています。植物の持つ癒しの力を多くの人に届けられたらと思っています。

植物と共に生きる喜び

――最後に、植物を育てる喜びについて教えてください。

山下:植物は正直なんですよね。手をかければかけただけ応えてくれる。毎日少しずつ変化していく姿を見るのは本当に楽しいです。特に盆栽は、何年、何十年と一緒に成長していくものですから、その時間の積み重ねが作品として現れる。それはとても贅沢な時間だと思います。

あとは、お客様が喜んでくれる顔を見るのも嬉しいですね。「去年買った盆栽が花を咲かせました」とか「ブルーベリーがたくさん実りました」という報告をいただくと、本当にやりがいを感じます。

これからも四季折々の植物の魅力を多くの人に伝えていきたいですし、日本の伝統文化である盆栽を、より身近に感じてもらえるような取り組みを続けていきたいと思います。

――本日はありがとうございました。

山下:こちらこそ、ありがとうございました。

山下園芸

和みの中に寄り添う、花木の生産者でありたい。ふーっと息をつくとき。目をつぶって感じられる和みを感じられよう、そんな気持ちを込めて花木を生産しています。

さらに詳しい情報はこちらでどうぞ

 

SHARE

タイトルとURLをコピーしました

SHARE

PAGE TOP
国産のお花農家と直接連絡できるお花のポータルサイト。

お花・生産者を探す

OR

一覧からお花・生産者を探す